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トップ > 特集 > CMSとIA デジタル時代を生き抜く情報整理術 3. 大量の音楽ファイル(MP3)をCMS流に管理する

執筆者

清水 誠
楽天株式会社 編成部

清水 誠

  • CMSエバンジェリスト/実践者。1995〜2004年まで凸版印刷・Scient・RazorfishにてWebプロデュース・IA・UI設計・調査のコンサルティングに従事した後、事業者側へ転身。ビジネス・テクノロジー・デザインの融合によるイノベーションを実現すべく、日系ベンチャーの情報システム部門や外資消費財企業のマーケティングコミュニケーション部門において、IT(ECM、CMS、DAM、ナレッジ管理、カラーマネジメントなど)を活用した改善をリードした。2008年からは楽天において、アクセス解析とSEOの標準化と全社展開に取り組んでいる。1995年国際基督教大学卒。

2009/06/29

IDCの調査によると、2007年のデジタル宇宙の規模は2,810億GBであり、年間60%の成長率で増え続けているという。情報セキュリティはITや総務が担当しているので自分にとっては身近な話題ではない、と思われる方も多いかもしれない。このレポートが発表された2008年以降、Webの世界ではサイトやページ数が増え続け、CMSの普及が進んだ。モバイルサイトでの売り上げが増え、iPhoneへの対応も必要になった。

情報管理は、企業だけの話ではない。情報のデジタル化は家庭でも進みつつあるため、個人としても、情報やコンテンツを賢く管理できるようになる必要がある。

家庭内でも進む情報のデジタル化

筆者は年末年始の時間を活用し、写真アルバム、紙、カセットテープ、MD、VHSビデオ、CD-R、DVD-R、USBメモリ、外付けHDD、携帯電話内臓メモリなどのメディアやデバイスに記録していた情報をデジタル化するという10年前に開始した作業をようやく終えることができた。

1999年頃は強化型PCを自作し、低ビットレートでエンコードしたMPEGファイルを650MBごとに分割してCD-Rに焼くという手間がかかったVHS映像のデジタル化は、今ではパソコンに標準装備の機能とソフトのみで実現できる。紙やハガキ、写真はスキャンし、音楽はすべてMP3化した。こうして、ダンボール4箱分の情報が500GBのハードディスクにすべて収まった。

年代ごとに整理していくと、情報の増加量が圧倒的に増えていることが分かる。デジカメの解像度が上がり、動画や音楽のエンコードレートも増加しているため、ファイルあたりの容量が増える。さらに、iPodやデジカメのメモリが増量しているため、オンラインでDVDやCDをレンタルしたり、音楽や動画、ソフトウェアをダウンロード購入することも増えた。我が家の場合、この増加傾向は「年ごとに60%増」というレベルではない。

デジタルコンテンツが増えると問題になるのが、その管理方法だ。今回は、デジタル音楽に関する整理・検索・管理の方法を紹介します。連載の前半で取り上げたIAやCMSの考え方は、いろいろな場面で応用することができるのだ。いや、気がつかないところですでに応用と普及が進んでいる、というべきかもしれない。

保管と分類を分離したiTunes

AppleのiTunesでは、音楽ファイルはファイルシステム上のフォルダ構成とは無関係に、データベースとしてフラットに管理される。大量の曲を整理するために使われるのが「プレイリスト」だ。曲をプレイリストへドロップするのだが、実体の場所を移動するのではなく、プレイリストにリンクをしているにすぎない。

● 同じ曲を複製することなく複数のプレイリストに入れることができる
● 分類方法を変更してもリンク切れが発生しない
● プレイリストを削除しても、その中の曲は削除されない

というように、保管(ファイルシステム)と分類(プレイリスト)を分離することで、柔軟な分類が可能になったのだ。これは、CMSのリポジトリにおけるコンテンツの管理方法やGmailやブログでタグを使ってコンテンツを分類するのと同じ考え方に基づいている。さらに優れているのが、iTunesの「スマートプレイリスト」だ。これは、曲を直接ドロップするのではなく、指定した条件で動的に曲を抽出し、リストを作成する。

● 2007年以降に発売されたJazzのうち
● 直近1ヶ月間にiTunesに追加された曲から
● ランダムに2GB分を抽出(iPod nanoに収めるため)

などの条件を指定すると、スマートプレイリストに曲が追加される。

検索はリアルタイムなので、スマートプレイリストを作成した後に追加した曲も自動的に追加される。CMSでは、これは「検索条件の保存」として実装される。システム内部では確かに検索条件を保存していて、クリック時に検索を実行しているのだが、検索であることを感じさせないUIをAppleはデザインしたのだ。

メタデータ検索の優れたUI

iTunesの検索UIとしては「カバーフロー」が有名だが、大量のコンテンツをメタデータでブラウズする優れたUIも持っている。「表示」メニューの「ブラウザを表示」を選択すると、下記のような画面になる。

一見するとエクスプローラのように階層を移動するナビゲーションのように見えるが、これはメタデータによる動的な絞り込み検索のUIなのだ。左からジャンル、アーティスト、アルバム、の選択肢をクリックすると、絞り込み検索が行われて曲リストが更新される。ここでの選択肢はあらかじめ定義されているわけではなく、iTunes管理対象の全ての曲のメタデータを抽出し、実際に使われている選択肢のみを表示している。

タクソノミー不在のツケ

UIに優れたiTunesだが、そもそもMP3のIDタグはメタデータの仕様としては時代遅れだ。IDタグのバージョンはいくつかあるが、下記のような問題を抱えている。

● 複数の項目を指定できない
● アルバムのジャケット写真は楽曲ごとに埋め込むので、管理が煩雑
● すべての項目がテキスト形式の自由記述なため、ソフト側で入力チェックを実装しづらい
● 選択肢のマスターが無いため、一貫性に欠ける

たとえば、ジャンルは分類がMECEではない。「Jazz」と「Nu Jazz」、「Lo-Fi」と「Downtempo」の境界はどこか?「Rock」と「Alternative」は本来、親子関係であるが、選択肢はすべてフラットであり関係性を表していない。オルタナティブロックは「Alternative」と表記することが多いが、「Alt. Rock」という表記も目にする。また、ジャンルの分類方法は国や時代によって変わる。日本でのクラブジャズは欧米ではnu-jazz、Jazz Dance、古くはAcid Jazzなどと呼ばれることもある。そもそも音楽のジャンル自体が統制されていないため、国内でもショップによって陳列方法が異なる。アーティストの方向性が時代によって変わることもある。

つまり、音楽ジャンルに統一されたタクソノミー(分類体系)は存在しない。図書を分類するために十進法が規定されたように、音楽ジャンルが明確に定義されて統一されれば管理が楽になるのだが、まだまだ先は長そうだ。(CDDBというCDに関するデータベースは存在するが、主観的な解釈のデータを寄せ集めた個別データベースに過ぎない。)

メタデータを管理しよう

このようにメタデータとしては欠陥の多い音楽ファイルだが、工夫すればスマートに管理することができる。いくつか方法を紹介しよう。

メタデータ編集支援ソフトを使う

メタデータをルックアップしタグ付けする機能を持つソフトを使ってみよう。例えば、MediaMonkeyは、iTunesのファイル管理機能を強化したような、楽曲総合管理ソフトだ。

「WEBから自動タグ付け」を実行すると、Amazon(国を選択可能)やWikipediaで曲に関するメタデータやジャケット写真を検索し、MP3のタグに自動反映することができる。

ルックアップが必要ない場合は、Super Tag Editor(STE改-Nightmare)が役に立つ。Excelのシートのように、特定フォルダ以下(子フォルダ内を含む)の楽曲のメタデータを比較しながら編集やコピーを行うことができる。

標準タクソノミーが存在しないメタデータを編集する場合は、個々のファイルのメタデータを編集するのではなく、他のファイルが持つメタデータを参照しながら編集すれば、統一感を保つことができる。

メタデータのゆらぎを解消する

ゆらぎの要因としては、スペルミス、大文字小文字、余計な空白、英語と日本語、解釈のブレ、などがある。iTunesが持つ前述のブラウザ機能を使うと、メタデータの揺らぎを検索することができる。

例えば、前述の「ブラウザを表示」で、ジャンルを「すべて」にしたままアーティストの「すべて」をクリックし、カーソルキーの「↓」を押しながら全てのアーティスト名を順番に確認してみよう。
曲リストのジャンルで、同じアーティストにも関わらず「Rock」と「Soundtrack」、「Other」が混在しているのが分かる。

さらに進んでいくと、アーティスト名の大文字と小文字が混在していることが分かる。

次に、ジャンルとアーティストを「すべて」にしておき、アルバムをひとつずつ確認してみよう。アルバム名に「Live On Lowlands」と「Live On Lowlands 18/08/06」の2種類があり、ゆらぎが発生していることが分かった。

ここで、メタデータのゆらぎを検知して修正方法を提案してくれる筆者愛用のアプリケーションを紹介しよう。beaTunesはiTunesと連動し、メタデータの管理を支援してくれるシェアウェアだ。起動すると、最近iTunesに追加された曲を検知し、各種の一貫性チェックを行ってくれる。

データの入れ方で工夫を

曲を複数のジャンルに同時に所属させたい場合、筆者はデータの入れ方を工夫することで対応している。ジャンルを「,」で区切って複数記述し、スマートプレイリストで文字列を「含む」で振り分けするのだ。たとえば、エレクトロニカ(Dance)っぽい生音Jazzの曲は、「Electronic, Jazz」というジャンルにしておき、ジャンルが「Electronic」を「含む」スマートプレイリストを作ることで、「Electronic」と「Electronic, Jazz」の両方を含むプレイリストを作ることができる。

アルバムとEP、コンピレーションを区別したい場合もあるだろう。例えば、コンピレーションの曲は既存アルバムにすでに収録されていることが多いため、アーティスト名によるスマートプレイリストを普通に作成すると、同じ曲が複数回再生されてしまう。そんな時は、曲がオリジナルアルバムに収録されている場合にのみ、「アーティスト」に加えて「アルバムアーティスト」のメタデータも入力するようにしてみよう。「アルバムアーティスト」でスマートプレイリストを作れば、特定のアーティストによるオリジナルアルバムのみを対象にしたリストが出来上がる。

IDタグには存在しないレーベルという単位でプレイリストを作りたい場合もある。筆者はこのような場合、コメントにレーベル名を記入しておき、コメントを対象に文字列の部分一致を条件としたスマートプレイリストを作成している。

異なるアルバムに同じ曲が収録されている場合、上記の方法でも除外することができない。そんな場合のために、iTunesにはチェックマークの機能がある。重複しているために対象外にしたい曲のチェックマークを解除しておき、スマートプレイリストの「チェックマークのある項目だけ選択する」にチェックを入れてみよう

リストに表示させる必要すら無い場合は、リスト上で「Delete」キーを押して「リストから削除」すればよい。ディスク上から削除されるわけではないので、再度必要になった場合は該当ファイルをiTunesのリストへドラッグ&ドロップすれば、もう一度対象に含めることができる。

ファイルシステムでの整理

iTunesでは曲がディスク上のどのフォルダにどの名前で保管されているかを気にすることなく、管理や検索ができる。とはいえ、最終的には曲はファイルシステム上で保管されている。ハードディスク上ではどう管理すべきだろうか?

ファイルシステム上では入手年代でフォルダ分けする

入れるフォルダは迷わず一つのみを特定でき、時間が経っても変わらないようなルールを徹底する必要がある。曲のリリース年などでフォルダ分けしてしまうと、古い楽曲を入手したときに過去のフォルダにさかのぼって追加することになるため、バックアップの際などに手順が煩雑になる。

容量不足で別のディスクに退避させる場合も、フォルダごとの総容量がいつまでたっても確定しないので、管理方法としてはふさわしくない。
そこで、入手した年や年月別にフォルダ管理をするのがおすすめだ。自分にとっての入手時期なので、時間がたっても変わることはない。発売日をネットで調べる必要もない。超整理法で書類を年代別にファイリングするのと同じ考え方だ。

重複を見つけて削除する

内容が同じと思われるファイルを検索できるソフトを使ってみよう。ただし機械的なマッチングなので、エンコード方法が異なると同じ曲でも別のファイルとみなされる。ファイルをコピーした重複のみを検知することができる。

一方、前述のbeaTunesの場合は、メタデータ(タグ)ベースで重複の可能性があるファイルを検知するため、エンコードや更新日時が異なっていても検知することができるが、メタデータが正しく設定されていることが前提になる。

ファイル名に気をつけよう

音楽用のリネームソフトを使おう(前述のMediaMonkeyにもこの機能がある)。メタデータをもとに、特定のルールに基づいたファイル名に一括変更することができる。

ただし、iTunesの場合はファイル名を変更すると曲がリンク切れしてしまうので、再登録が必要になる。この場合、スマートプレイリストを使っていれば曲がリストに自動で再登録されるが、「追加した日」や「再生した回数」など、MP3のIDタグに保存されないiTunes独自のメタデータはクリアされてしまう。管理を始める前に、ディスク上のフォルダ構造とファイル名の命名規則を決めておくのがベストだ。

なお、Webのコンテンツ管理システム(CMS)では、個々のコンテンツに固有のIDが割り当てられる。ファイル名はメタデータの一つでしかないため、ファイル名を変更してもメタデータが引き継がれ、管理DBと実体ファイルがリンク切れを起こすことはない。そもそもフォルダとファイルというメタファーは現実の世界における制約をそのまま引き継いでいるため、大量のデジタル時代における分類・検索方法としては力不足だ。最近はWebブラウザのブックマークやメールソフト、OSでもメタデータ(タグ)ベースの分類・検索方法が実装されるようになってきた。これは使い勝手やUIのトレンドなのではなく、根本的な情報管理の概念が変わりつつある、ということを意味する。

まとめ

以上、大量の音楽ファイルを整理し管理するための方法について紹介した。実は、Webコンテンツの管理も音楽ファイルの管理も、考え方は同じなのだ。身の回りのファイルをうまく整理し管理することができるようになれば、Webコンテンツもうまく管理できるようになる。

デジタル音楽、動画、メール、住所録、デジタル書籍、ソフトウェア、スケジュール、ブログ記事、Webクリップ、家計簿、名刺のスキャン画像など、個人が管理するデジタル情報は増えるばかりだ。多様な情報・コンテンツをスマートに管理できる情報整理術を実践できれば、デジタル時代を賢く効率よく生きていくことができる。筆者がIAやコンテンツ管理にこだわり、研究や実践、啓蒙活動を続けているのは、このためだ。ぜひ実践しながら身に着けて、業務や日々の暮らしに役立ててみてほしい。


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